老化の予防と食生活
老化 は避 けられ るも のなら 避け たいも ので す。い つま でも若 く、 たくま しく 、美し くあ りたい もの です。 最近 、老化 の仕 組みに つい ての研 究に 興味が もた れるよ うに なって きま した。 ヒト にはヒ トの 、ゾウ には ゾウの 、ネ ズ ミ に は ネ ズ ミ の 寿 命 と い う も の が あ り ま
す。このように動物にはおよその寿命があり、
長生き をす るもの もあ れば短 命の ものも ある わけです。
この 差は どこか らく るので しょ うか。 悪玉 として 最近 注目さ れて いるの が活 性酸素 、い わゆる 酸素 毒です 。活 性酸素 は非 常に反 応性 に富ん でお り、私 達の 体では 呼吸 により エネ ルギーを獲得する過程において生じます。 とこ ろで 私達の 体は 多くの 細胞 からで きて います が、 この細 胞や 細胞内 小器 官の膜 を構 成して いる 脂質が 活性 酸素に よっ て過度 に酸 化され て生 じるの が過 酸化脂 質で す。ま た活 性酸素 は酵 素など の蛋 白質の 変性 も起こ しま す。過 酸化 脂質の 生成 は加齢 に伴 い亢進 する ことが多くの研究により示されており、老化
と 密 接 な 動 脈 硬 化 や 白 内 障 な ど と 関 係 が あ る
とい わ れ て いま す 。 で すか ら 過 酸 化脂 質 の 生
成はなるべく少なくする必要があります。 生 体 内 に は こ の た め に 過 酸 化 脂 質 の 生 成 を
阻止 す る 抗 酸化 能 が 備 わっ て い ま す。 抗 酸 化
能 に は 酵 素 系 に よ る も の の 他 に ビ タ ミ ン C や
ビタミン E などの抗酸化作用によるものがあ
りま す 。 こ れら の 抗 酸 化能 が 高 い ほど 長 寿 で
ある と い わ れて い ま す 。 つ ま り老 化の 予 防 に
はこ の 抗 酸 化能 を 高 め る必 要 が あ り、 食 生 活
を通じて体内のビタミンCやビタミン E を高
めることによりある程度可能と思われます。 で は 過 酸 化 脂 質 の 増 加 は ど の よ う な 食 生 活 や生活習慣と関係があるのでしょうか。 過 酸 化 脂 質 と 普 段 の 食 生 活 や 生 活 習 慣 と の 関 係 に つ い て 疫 学 的 調 査 に よ り 検 討 し て み ま
した 。 そ の 結果 、 血 液 中の 過 酸 化 脂質 は 加 齢
によ り 増 加 し、 肥 満の 人に お い て 高い こ と が
解り ま し た 。 食 生 活で は、 過 酸 化 脂質 の 増 加
は魚 介 類 お よび 肉 類 、 特に 魚 介 類 の摂 取 頻 度
方、 血液中 のビタミ ン Cは過酸 化 脂質の増加
とは反対 に 低下がみ ら れました 。 喫煙・飲酒
との関係 で は喫煙量 、 飲酒量の 増 加に伴い過
酸化脂質 の 増加傾向 が みられま し た。 飲酒者
は 非 飲 酒 者 に 比 べ て 魚 介 類 お よ び 肉 類 の 摂 取
頻度が高 い 反面、 野菜 類および 果 物類の摂取
頻度が低い傾向がみられました。
こ れ ら の 結 果 は 過 酸 化 脂 質 低 下 の た め に は
過剰な脂 肪 の摂取、 タ バコの吸 い すぎ、 酒の
飲み過ぎ 、 野菜・果 物 類の摂取 不 足を防ぐこ
とが必要であることを示唆しています。 魚 介 類 の 摂 取 は 血 液 中 の 脂 質 の 低 下 や 血 液
の凝固の 予 防に有効 と され、 最近 注目されて
います。 し かしこの 調 査でみら れ たように魚
介 類 の 摂 取 が 増 加 す る と 過 酸 化 脂 質 が 増 加 す
る傾向に あ ります。 た だし魚介 類 の摂取が悪
いという の ではなく 、 魚介類摂 取 による生体
にとっての有利な作用を損なうことなく、 か
つ 過 酸 化 脂 質 の 生 成 を 低 く す る た め に は ビ タ
ミンCやビタミン E の低下を招かないように
注意する 必 要がある と いってい る のです。 た
だビタミン E はビタミンCがあれば再生され
る の で ビ タ ミ ン C の 摂 取 が よ り 重 要 と 考 え ら れます。
す な わ ち 脂 肪 と 野 菜 類 や 果 物 類 の 摂 取 の バ ランスが健康維持のうえで必要となります。
特に飲酒 者 には喫煙 者 も多く、 偏 食の傾向が
あり、 野菜 類や果物 類 の摂取が お ろそかにな
りがちで す 。 また高齢 者は体内 の 抗酸化能の
低下が考 え られ、 バラ ンスのと れ た食生活の
重 要 性 を よ り 一 層 認 識 す る 必 要 が あ る と 思 わ れます。 (環境保健部:荒木万嘉)
(荒木主 任 研究員の 老 化に関す る 研究は、 平
成4年第14回大同生命厚生事業団医学研究学
術賞を受賞しました。
機器紹介(液体クロマトグラフィー)
クロマトグラフの語源は、今世紀初めにロシ
アのTswettという学者が植物の色素を分離し
たことに由来し、クロマトとは色(色素)、 グ
ラフとは図で表すという意味です。
現在、多種多様の食品や飲料水試料中の農薬
な ど を 分 析 す る 一 手 段 と し て 当 研 究 所 に お い て も 液 体 ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー と 呼 ば れ る 分 析 機器を使用しています。
ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー の 基 本 装 置 は 簡 単 な も
ので、試料を注入する部分、各成分を分離する
分離管(カラム)の部分と分離された成分を検
出する部分から構成されています。
多孔性の微細な固体 (例えばレンガ)に不
揮 発 性 の 液 体 を 覆 っ た も の を 分 離 管 に 入 れ ま
す(固定相)。 物質が固定相中を移動する 時
に 使 わ れ る 移 動 相 が ガ ス の 場 合 を ガ ス ク ロ マ
トグラフィー、 溶液の 場合を液体クロマトグ
ラフィーと言います。 液体クロマトグラフィ
ー に は 高 圧 を か け 移 動 相 溶 媒 を 流 す 方 法 が あ
り、 これによると分離管で成分の移動と分離
を早め、 分 析時間を 短 くできま す 。 この装置
を高速液体クロマトグラフィーと言います。 複 数 の 農 薬 を 含 ん で い る 微 容 量 の 試 料 を マ イ ク ロ シ リ ン ジ と い う 注 射 器 で 機 器 に 注 入 し
ます。 溶媒 によって 分 離管の入 口 から出口に
向かって 移 動する試 料 中の農薬 類 は、 固定相
で捕獲と容離を繰り返して進んで行きます。
一般に、 小 さな分子 構 成の農薬 の 方が早く進
みます。 そ のため固 定 相を移動 す る間に次第
に各々の農薬は分かれて行くのです。
分 離 管 か ら 順 番 に 出 て く る 農 薬 を 分 離 管 の
出口に取 り 付けてあ る 検出器で 検 出し、 それ
を記録し て 、どの様 な 農薬か( 定 性) 、また
どの程度 含 まれてい る か(定量 ) を知るので
す。現在 で は、 液体ク ロマトグ ラ フィーの検
出感度は化合物にもよりますが ppb (十億分
の一)レ ベ ルの濃度 ま で検出で き ます。 液体
クロマト グ ラフィー は 、 農薬の他 に食品添加
バイオテクノロジー
(生物工学・遺伝子工学・生命科学) バ イ オ テ ク ノ ロ ジ ー は エ レ ク ト ロ ニ ク ス 、
新 素 材 と 並 ん で 今 世 紀 最 後 に し て 最 大 の 革 新 技 術 で あ り 、 次 世 代 産 業 と し て 、 大 き く 発 展 す る も の と 期 待 さ れ て い ま す 。 そ し て 、 こ れ ら の 分 野 の 技 術 開 発 が 、 豊 か な 2 1 世 紀 を 迎 え る た め の 鍵 に な る で あ ろ う こ と は 、 昨 今 の 世界の共通的な認識となっています。
バ イ オ テ ク ノ ロ ジ ー の 根 源 は 1 6 0 0 年 代 に フ ッ ク ( 英 ) が 顕 微 鏡 で コ ル ク を 観 察 し 、 細 胞 を 発 見 し た と こ ろ に あ る と い え ま す が 、 現 代 の バ イ オ テ ク ノ ロ ジ ー は 1 9 5 3 年 ワ ト
ソン(米)と クリック(英)がDNAの2重
螺 旋 構 造 を 解 明 し 、DNA − RNA 蛋 白 質 合 成 と い う [ セ ン ト ラ ル ド グ マ ] を 提 唱 し た と ことに端を発すると見てもよいでしょう。 1 9 7 0 年 代 後 半 に 至 り 、 細 胞 融 合 技 術 に よ り 、 ポ テ ト と ト マ ト の 雑 種 植 物 [ ポ マ ト ] を 作 る こ と に 成 功 し 、 さ ら に 、 ヒ ト 成 長 ホ ル モ ン 、 イ ン シ ュ リ ン 、 セ ク レ チ ン 等 が 組 換 え
DNA 技術により、 続々と大腸菌 で生産され
る道が拓かれるに至りました。 バイオテクノ
ロジーは生体およびその機能を、直接或いは、 シュミレートして利用する物質生産技術です。 こ の 物 質 生 産 と は 、 食 食 料 生 産 、 環 境 浄 化 の た め の 物 質 分 解 も 含 む も の と 広 義 に 解 釈 し 、 人 間 に 直 接 適 用 す る 技 術 は こ れ に 含 め な いと定義します。
す な わ ち 、「 生 物 の も つ 働 き を 直 接 利 用 す る か 、 或 い は 、 そ れ を 模 倣 し て 物 質 生 産 や 分 解し利用する技術」ということであります。
従 っ て 、 酒 造 な ど の 昔 か ら 存 在 し た 発 酵 工 業 の 分 野 は 含 め ず 、 通 常 は 近 年 に な っ て 開 発 さ れ た 生 産 技 術 の み を 指 し て バ イ オ テ ク ノ ロ ジ ー と い う こ と に な っ て い ま す 。 バ イ オ テ ク ノロジーは
① 遺伝子組換え ② 細胞融合 ③ 組織培養
④ バイオリアクター
の 四 つ の 基 礎 技 術 か ら な る と 考 え ら れ 、 こ れ ら の 登 場 に よ っ て 従 来 の 「 育 て 加 工 す る 」 技 術 か ら 「 創 造 す る 」 技 術 の 時 代 へ の 以 降 と な りました。創造は人間だけがもつ能力であり、 そ こ で 有 能 な 人 間 が よ り 創 造 的 に 能 力 を 発 揮 できる場の用意が要請されます。
近 年 に お け る バ イ オ テ ク ノ ロ ジ ー 研 究 の 動 向は、急速に拡大の様相を呈してきています。 特 に 、 バ イ オ テ ク ノ ロ ジ ー を 利 用 し た 技 術 開 発 は 、 医 薬 品 、 食 品 、 化 学 、 資 源 、 エ ネ ル ギ ー 、 エ レ ク ト ロ ニ ク ス の 各 分 野 に ま た が り 、 人 間 の 福 祉 の 向 上 や 産 業 の 充 実 発 展 に 大 き な イ ン パ ク ト を 与 え る も の と 言 わ れ て い る こ と か ら 、 民 間 お よ び 国 や 公 的 試 験 研 究 機 関 の 相 互 力 が 不 可 欠 の も の と な っ て い ま す 。 少 し 前 ま で の 生 命 科 学 は ウ イ ル ス や 微 生 物 を 使 用 し た 研 究 が 多 か っ た の で す が 、 大 き な 流 れ と し て は 動 物 や 植 物 、 さ ら に は 人 間 に 向 か う 方 向 に な っ て き ま し た 。 こ れ に 伴 い 、 バ イ オ テ ク ノ ロ ジ ー も バ ク テ リ ア の み で な く 、 動 植 物 細 胞、或いは動植物固体を使う方向にあります。
生 命 科 学 の 有 力 な 研 究 手 段 で あ る 組 換 え
DNA技術は、バイオテクノロジーの中心的技
術 と し て も 重 要 視 さ れ て い ま す が 、 こ れ は 今 ま で の よ う に 微 生 物 を 使 用 し た 発 酵 工 業 、 微 生 物 工 業 へ の 応 用 だ け で な く 、 農 業 や 医 療 、 さ ら に は 工 業 な ど の 分 野 に 応 用 さ れ よ う と し ている点にあります。
デンマーク・ビドロー市のゴミ処理対策
「地球をまもり人にやさしい町づくり」の研
修テーマ の なかで、“ 廃 棄物の減 量 化と適正処
理方策について” の研修のために平成 4年11
月13日、デンマークで廃棄物の適正処理に熱
心に取り組んでいるビドロー市を「兵庫県地方
行政海外研修団」の一員として訪問しました。 ここは首都コペンハーゲンから車で約1時間、
人口 4万 5 千人の静かな住宅地と海に面した
美しい町で、環境整備の行き届いたゴミ埋め立
て地とゴミ焼却場があります。
ゴミの 収 集は、 ①ビ ールおよ び 飲料水の瓶
についてはデポジェット方式(焼却時に瓶代
を返す)を取ることによりリサイクリング率 は ほ ぼ 100% を 達 成 し て い ま す 。 ② 新 聞 雑 誌、ガラス容器、電池、衣類等はアルファベッ
トでそれぞれの種類を表示したリサイクル・コ
ンテナに分別収集され、 ③台所ごみはコンポ
スト化し、 堆肥として利用するか、メタンガ
ス発生工場に運搬されます。 ④薬品、ペンキ
の 使 い 残 し 等 の 危 険 で 有 害 な ご み は 薬 局 や ペ ン キ 屋 に 持 参 す る か 、 定 期 的 に 巡 回 す る 環 境
Vanという収集車に引き取ってもらい、 その
後リサイクリング・ステーションに集めます。 ⑤工場からでる危険、有害な廃棄物は各企業
市中に置かれている リサイクル・コンテナ (ガラス容器用)
が受け入れ施設まで運び、再生の有無によって
分けられ た 後、 ステー ションに 集 められたも
の と 同 様 に 国 策 企 業 コ ム ネ ケ ミ 会 社 に よ っ て
安全な方 法 で処理さ れ ます。 ⑥粗 大ごみは各
自 ス テ ー シ ョ ン に 持 参 す る か 電 話 連 絡 に よ り
収集してもらい、その後再生か、或いは埋立て
られます。
ごみを 減 らす対策 と しては、 全 国でワンウ
エー(使 い 捨て)容 器 の製造、 販 売が禁止さ
れており 、 スーパー マ ーケット 等 では商品を
運 搬 す る コ ン テ ナ も 繰 返 し 利 用 で き る 頑 丈 な
ものが使 用 され、 店内 での野菜 等 の販売では
ト レ ー に 入 れ て 売 る こ と は な く 商 品 は 山 積 み されていました。また、買物した商品を持
ち 帰 る 際 に は 、 ナ イ ロ ン 袋 は 使 用 さ れ ず 家 庭 か ら 持 参 し た 布 袋 の 使 用 が 義 務 付 け ら れ て います。
こ の よ う な 対 策 は 廃 棄 物 を リ サ イ ク リ ン グ に よ っ て 環 境 汚 染 の 流 れ を 可 能 な 限 り 防 止 す る こ と と 地 球 資 源 の 温 存 化 を め ざ し て お り ま
す。 こ れ ら の目 的 達 成 には 、 環 境 に対 す る 認
識を 深 め る ため 小 学 生 から の 教 育 と、 市 民 自
身自覚と責任によって支えられています。 日本においても廃棄物の分別収集そして再生、
再利 用 の 必 要性 が 叫 ば れは じ め ま した が 、 全
国 的 に 定 着 す る た め の 施 策 が 一 日 も 早 く 取 ら れなければならないと感じた研修でした。
(食品薬品部:安井陽子)
本誌に関するお問いあわせは下記にお願いします。
編集発行 兵庫県立衛生研究所 (078)511−6581(代)